●2019年5月第3週のまとめ
・週間指数動向
今週は、引き続きFEDによる「patient」継続への安心感も、5/5にトランプ大統領が米中貿易協議進展に対する懸念を表明した後の世界的な景況感悪化懸念の流れが継続して上値の重い展開に。週間ベースではTPX、FTSE、DAXがプラス圏で推移。東京市場は、日経円建ては大型連休を挟んで7営業日続落後に辛うじて反発もドル建てとともに続落。TPXは反発する展開に。米国は三指数ともに下落。DJIAは4週続落、SPXは続落、NASDAQは7週ぶりの反落から続落。欧州は、FTSEは4週ぶり、DAXは5週ぶりの反発。中華圏指数は、上海総合指数は4週続落、香港は続落の展開に。今週の史上最高値、昨年来高値更新市場はなし。年間ベースでは全市場がプラス圏で推移。
日経平均円建ては、4月中旬に200日線をギャップで飛ばして上伸したものの、大型連休明けにこれをアイランド・リバーサル化して一段下落した後は戻りの鈍い展開に。ここからは、3月→4月の月替わりで形成した窓の水準(≒日足一目の雲)21100円処を改めてサポート化して4月高値トライに向かえるのか否かに注目。
S&P500は、5月初旬での上げ詰まりから値を崩すものの、年初からの「patient」継続、ゴールデン・クロスに転じた200日線をサポートに下げ渋りの展開に。ここからは50日線水準を奪回して史上最高値圏に戻れるのか否かに注目。
NASDAQはSPX同様に50日線水準が重く伸び悩みの展開。引き続きFAANG系銘柄の強弱感が分かれるなか、200日線水準をサポートに上値追い継続の展開に向かえるのか注目。
直近史上最高値を更新したSPX、NASDAQに対してDJIAは昨年10月に示現した史上最高値を奪回できずにダブルトップから失速する展開。ここからは、3月安値、200日線をサポートに変えて改めて史上最高値更新に向かう動きとなるのか、200日線割れから戻り一巡が警戒される展開となるのか注目。DJIA-Nikkeiスプレッドは5000Pでトップ示現後は一進一退の展開。4月、5月の米>日差を詰め得る期間を通過しつつあるなか、2019/1Q・GDP速報値を通過して消費増税の可否に対する思惑から、この乖離が縮小、拡大のどちらに向かうの注目。
来週は、決算一巡で材料難の期間に入っていくなか、引き続き米中、米欧、米日貿易協議の「政治ネタ」、「景況感悪化懸念」再燃等への警戒感台頭を背景に調整継続の動きとなるのか、ここを凌いで改めて高値圏回帰の動きを目指すのか注目。
・週間為替動向
今週の主要通貨は、米中貿易協議の難航、追加関税発動への懸念が再燃するなか、米債利回り低下傾向が継続。これを背景に週を通すとUSD>JPY>EUR>CNH>>AUD安の「USD高+リスク通貨安」のリスクオフの展開。JPYはストレート円では若干の円安も、クロスでの円高が響いて東京指数には重荷の展開。引き続き各国金融政策転換への思惑を孕んだ「弱さ比べ」と世界的な景況感悪化懸念を背景に、USD高による米企業への業績圧迫懸念、新興国通貨安に対する財務状況悪化懸念、米国の政治的混乱、通商問題、hard Bexitの再燃、ストレート円での円高進行(USD高<JPY高)に警戒。
・週間債券動向
今週の債券市場は、年初以来の「patient」継続を背景に、米国対中追加関税発動による将来の不透明感から債券買いの展開に。米10年債利回りは昨年の持合いレンジ2.7~3.0%の下限域を大きく割れて2.5%下方で推移。引き続き50日線水準が上値抵抗としてワークする展開に。30-5y、10-2yスプレッドはいずれも一進一退も、長-中期で若干拡大傾向。中期ゾーンの金利逆転(インバート)継続、米債イールド・カーブのスティープ化傾向も継続。また、期待インフレ率(BEI)は1.9%前後での推移から実質金利は低位安定の展開に。ここからは、対中追加関税発動を背景としたコスト・プッシュ型インフレ懸念から17年レンジ上限、18年レンジ下限向かいの2.7%処を回復して再び3.0%方向を目指す動きとなるのか、リスクオフの債券買い、あるいは「ゴルディロックス」的な動きの継続から2017年レンジに定着するのか注目しておきたいところ。なお、債券ボラティリティー(TYVIX)は立ち上がり気味の展開。引き続き「債券ボラティリティー上昇発」の波乱には警戒しておきたいところ。
欧州国債は、米債利回り低下の波及と、イタリア財務状態悪化懸念を受けて、ドイツ債買いイタリア国債売りの展開に。南欧危機再燃懸念に対しては、ECB理事会で再導入されたTLTROへの期待も、引き続きhard Brexit懸念、南欧問題による「欧州発」のリスクオフ再燃の可能性に警戒。
期待インフレ率(BEI:10-Year Breakeven Inflation Rate)は、米国対中追加関税発動を背景に失速気味の展開に。5年先5年物予想インフレ率(5y-5y Forward Inflation Expectation Rate)も期待インフレ率と同様の展開。原油価格の押し上げ効果以外にインフレ期待が盛り上がらない構図は変わらないなか、引き続き実質金利(≒長期金利-期待インフレ率)低下によるリスク好選期待、原油価格上昇によるコストプッシュ型インフレ懸念と「ビハインド・ザ・カーブ」を嫌うFEDの金融政策との綱引きに注目。
5/17現在のFEDによる6月FF金利目標は、現行の2.25-2.50%据え置きが90.0%で前週93.3%から若干低下。2.00-2.25%への利下げ織り込みは10.0%で前週の6.7%から僅かに上昇。「patient」によって自らに足枷をはめた感も否めないなか、原油価格上昇によるインフレ圧力再燃懸念との齟齬、景況感悪化に対する政策の「ビハインド・ザ・カーブ」には留意しておきたいところ。ここからは、引き続き「金利上昇(低下)+リスク資産買い(売り)」の「伝統的反応」で推移するのか、あるいはFEDの方向転換により「ゴルディロックス」的な動きが継続するのか注目。
・コモディティー他
オイル(原油)は、「貿易戦争」による将来の需要減、米大統領による口先介入とサウジアラビアによる協調思惑も、イラン制裁を背景に50日線、200日線水準から立ち上がり気味の展開に。原油価格上昇による金利押し上げ効果と、中銀金融政策による金利低下バイアスとの綱引きには引き続き留意しておきたいところ。
「炭鉱のカナリア」ハイイールド債は、株価指数の失速に倣って調整気味の展開に。USD高による新興国通貨安への波及に懸念が残るなか、引き続き「原油価格低下+新興国通貨安(ドル高)→新興国、低信用債利回り上昇→クレジット・リスク」の連想ゲームを念頭に、リスク資産、債券、為替、コモディティー市場の動向とあわせて、「突然死」しないか今後の展開に注目しておきたいところ。
・その他
サプライズ・インデックスは、引き続きマイナス圏で推移も、下げ止まり気配からSPX予想EPSとindexの乖離拡大傾向はいったん小康状態の展開に。FEDの「patient」を背景に「bad news is bad news」になり難い展開のなか、政治的混乱、通商問題、ドル高、クレジットリスクによる企業業績圧迫懸念、経済指標のさらなる悪化傾向がリスク資産の許容PER低下を引き起こさないか、またミクロ(企業業績)の悪化がマクロに波及して同指標に異変をもたらさないか注視していきたいところ。
市場センチメントは、通商問題、直近のリスク資産軟化を受けて引き続き悪化傾向の展開に。CPCは1月初旬以来の高値水準に到達したところから反転気味の展開。ここから低値方向に向かってリスク資産が立ち直れるのか否かに注目。なお、足元のSKEW指数は小康状態で推移。
総体的には、FEDが「patient」によって自らに足枷をはめたことにより、引き続き実体経済に対して金融政策面での「overdosed」と景気減速圏の綱引きが警戒される構図。直近は「通商問題」によって大きく振られる局面が見られるものの、「patient」を背景とした実質金利低下、「ゴルディロックス」の象徴でもある低VIX、低TYVIX状態が継続するのか否かに注目。1Q企業決算通過で手掛かり材料難が想定される期間に入ってくるなか、引き続き政治的混乱、米中通商問題、景況感悪化懸念に留意していきたいところ。
●来週の主な予定
20日(月)
日本GDP速報値(第1四半期)★
パウエルFRB議長、講演★
フィラデルフィア連銀総裁、講演
21日(火)
米中古住宅販売件数(4月)
カーニー英中銀総裁、議会証言
シカゴ連銀総裁、講演
ボストン連銀総裁、講演
OECD世界経済見通し
22日(水)
日本貿易収支(4月)
英消費者物価指数(4月)
NY連銀総裁、講演
ドラギECB総裁、講演★
アトランタ連銀総裁、講演
セントルイス連銀総裁、講演
FOMC議事録(4月30-5月1日開催分)★
OECD閣僚理事会
23日(木)
独IFO景況感指数(5月)
米新築住宅販売件数(4月)
欧州議会選挙(28日まで)
ダラス・サンフランシスコ・アトランタ・リッチモンド連銀総裁、パネル討論
24日(金)
日本消費者物価指数(4月)
米債券市場、短縮取引
25日(土)
トランプ米大統領、国賓として来日(28日まで)
26日(日)
スペイン地方選挙
独ブレーメン州議会選挙